2025年11月19日、Lazuliは花王株式会社 デジタル戦略部門 カスタマーリレーションシップマネジメント部 部長 後藤 亮氏、株式会社顧客時間 共同CEO・代表取締役 奥谷 孝司氏をお招きし、「体験価値を高める商品データ活用 — 顧客体験を拡張する花王のDAM進化」をテーマに、エグゼクティブ向けイベント「Lazuli Executive Salon Vol.9」を開催しました。
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本イベントでは、花王が長年取り組んできた商品マスターとデジタルアセットの整備(DAM)における実務課題や解決プロセスを含め、顧客体験の拡張につながる商品データの活用について講演いただきました。また、10月末に米国ラスベガスで開催されたCDP Worldでの示唆を踏まえ、顧客データと商品データの接続がもたらす次世代のCXについても議論が交わされました。
デジタル資産の“一元管理”を実現した花王の改革
第1部では花王株式会社の後藤氏より、「体験価値を高める商品データ活用 — 顧客体験を拡張するDAM進化」をテーマにご講演いただきました。
多くの企業現場では、「クリエイティブ素材が見つからない」「最新版が分からない」といったデジタル資産の管理課題が慢性化しています。こうした課題は、作業効率の低下だけでなく、誤った素材使用によるブランド毀損や、多媒体展開の障壁にもなり得ます。こうした課題に対応する仕組みとして注目されているのが、画像や動画などのデジタル資産を一元管理し、多媒体での活用を支えるツール「DAM(Digital Asset Management)」です。 かつて花王には、クリエイティブ素材が社内クリエイターの個人のPCにデータが散逸していたり、社員の退職によって資産が消失したりするなどの課題があったといいます。そこで花王はAdobe Experience Manager (AEM)を基盤としたグローバルでのデジタルアセットの管理環境を構築しました。

現在はAEM上で716サイト、約311万件(61TB)の資産を一元管理しており(2025年4月時点)、以下の標準化を徹底していると説明しました。
・業務プロセスの刷新:
納品フローにDAM登録を必須化。「素材を登録しなければ完了しない」仕組みで、確実なデータ集約を実現。
・ワンソース・マルチユース:
全素材へのメタデータ付与で「マスターの増殖」を防ぎつつ、過去資産もデジタル化し価値を向上。
社内情報を一般消費者向けに変換・統一する「社外公開マスター」を整備し、以下の仕組みを実現したと述べます。
・Webページの自動生成:
商品コードなどの入力だけで、詳細ページ(特徴・成分・Q&Aなど)を約10秒で自動生成する体制を構築。
・店舗表示機能の提供:
納品実績と位置情報を紐づけ、現在地から10km以内の取扱店を地図上に表示。外出時間短縮のニーズに応え体験を拡張。

AI統合とリアルタイム配信による未来展望
さらに後藤氏は、今後は整備されたデータ基盤をさらに進化させ、以下の活用を目指していきたい、と語りました。
・生成AIの統合:
コンテンツ生成や自動タグ付けにより、品質・速度の向上とコスト削減を図る。
・リアルタイム配信とデータ統合:
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)と連携し、パーソナライズされた情報提供でROI向上を目指す。
後藤氏は、将来的には構造化された情報を元にAIが瞬時にページを作成・配信する時代を見据え、花王ウェイ(花王の企業理念)を体現する情報基盤の整備を進めていくと語りました。
CDP World 参加報告 ー CDP活用と組織構造の変革
第2部では、2025年10月にラスベガスで開催されたCDP Worldに参加した顧客時間 奥谷氏より、CDP活用の最新トレンドや具体的な活用事例について報告がなされました。
奥谷氏は北米最大級のテーマパーク運営企業のSix Flagsの事例を共有しました。同社はデータ分断の課題に対し、CDPで統一プロファイル「Family Journey 360」を構築。特筆すべきはAIによるSNS分析の自動化です。15名分の手作業をリアルタイム可視化へ変え、課題の早期発見と100万ドル超のコスト削減を実現。「運営に第二の感覚器を与えた」と高く評価されています。
Six Flagsのデータ基盤構築プロセスでは、マーケティング部門(CMO)が求める「スピードとCX改善」と、IT部門(CDO)が重視する「基盤統合と品質」の間で意見のズレが生じ、意思決定が遅延しました。この経験から、IT依存ではなく、CXから逆算したCMO主導の意思決定構造への再設計こそが成功の鍵だと結論付けられました。

AI時代の人の役割
またAI時代の人の役割についても知見が共有されました。AIが95%の業務を自動化する時代、人間は戦略、最終判断、そして「顧客の物語を紡ぐ」役割に注力すべきであり、AIと人間が協働する「Human-in-the-Loop」体制を確立することこそが、ブランドの信頼と進化を支えると語りました。
「人材・運用・データ連携」で描く、真のDX推進への道筋
参加された国内大手リテール/メーカー企業の中でDXの推進やマーケティングにおける意思決定を行う方々とともにディスカッションが行われました。
DXを真に前進させるには、マーケティングとIT部門の間にある「見えない壁」を取り払う必要があります。鍵となるのは、両者の言語・視点を理解できる「融合人材」です。例えばエンジニア出身者がマーケティング部門に加わり「通訳」となることで、組織連携が滑らかになり、施策実行のスピードと質が飛躍的に向上するという視点が共有されました。
高機能なCDPを導入しても、現場が使いこなせない「運用の壁」をどう乗り越えるかが課題です。ベンダーには単なるツール提供にとどまらず、IT部門への継続的な働きかけや、顧客がビジネス価値を実感できるまでのコンサルティングを通じた「伴走支援」こそが不可欠であるとの認識で一致しました。
一企業の枠を超え、メーカー間などでデータを連携させる「未来の構想」についても議論されました。共通の目的のために商品データや顧客属性タグなどを企業間で共有し合うことは、サプライチェーン全体の最適化や、かつてない解像度での顧客理解につながる次世代の成長戦略として期待されると議論されました。
Lazuli PDP 新機能紹介 ー AIによる「非構造化データ」の自動構造化
「非構造化データ」の壁をAIで突破する
Lazuli のVPofTechの久山より、現在開発中の新機能のデモを行いました。多くの企業が直面している課題の一つに、メーカーや小売などの各社間でやり取りされるデータフォーマットの不統一があります。ExcelやPDF、画像など、形式がバラバラな「非構造化データ」を、システム間連携やAIをはじめとした各種サービスで利用するための「構造化データ」へと整備するには、多大な工数が必要となります。このデータ活用の入り口におけるボトルネックを解消するため、LazuliはAIを活用した自動構造化エンジンの開発を進めています。
デモでは、複雑なExcelファイルを読み込ませるだけで、AIが項目を自動マッピングし、バリデーションチェックまで行う様子が紹介されました。「ペットボトル」などの容器形状や成分情報の抽出はもちろん、誇張表現の修正や、社内ルールに基づいたカテゴリの名寄せ(例:「天然水」→「ミネラルウォーター」)なども、簡単なUI上で完結します。 さらに重要な点として、人間が行った修正内容をAIが学習し、次回以降の処理精度を自動的に向上させる仕組みが備わっています。
この機能によってPIM(商品情報管理)やDAM(デジタルアセット管理)へのデータ投入の効率化が期待されます。Lazuli PDPは、企業間やシステム間のデータ流通のハブとして機能することで、企業のDX推進を強力に後押ししていきます。
まとめ
今回のExecutive Salonでは、花王によるDAM構築と徹底したデータ標準化が、顧客体験の拡張やAI活用基盤の確立に繋がっている事例が共有されました。
ガバナンスと顧客体験を両立させる花王の取り組みは、データドリブン経営を目指す企業にとって、実践的なヒントとなるのではないでしょうか。
また、真のDXには、マーケティングとITをつなぐ「融合人材」の育成や、AIと人が協働する体制など、組織変革が不可欠であるとの認識で一致しました。
Lazuliは、AIによる「非構造化データの自動構造化」等を通じ、データ流通の課題解決を支援します。高精度な商品データ基盤により、DAM等へのデータ連携を効率化し、企業のDX推進に貢献してまいります。
Lazuli株式会社について:
Lazuli株式会社は2020年7月設立のスタートアップで、企業のプロダクトデータを統合、整備し、データ/AI活用を支援するSaaS「Lazuli PDP」を提供しています。高度なAI/ML技術により、商品データの収集、構造化、連携を可能にし、製造・小売業のデジタル化を促進します。Lazuli PDPは、複雑なデータ処理を自動化し、部門間のデータサイロを解消します。企業が一貫性ある商品情報を提供できることで、顧客体験の向上とデータ活用の最適化に貢献しています。
Lazuli PDPとは:https://corporate.lazuli.ninja/product-data-platform/