Lazuli株式会社は、ニューヨークで開催された世界最大級の小売展示会「NRF 2026: Retail's Big Show」の期間に合わせ、第10回となる「Lazuli Executive Salon」を開催しました。今回は、ニューヨーク現地視察およびNRF参加中のリーダー層にご参加いただき、AI時代の小売・マーケティングの未来と、「商品情報」が握る鍵について議論しました。
Contents
グローバルで再認識された「商品情報」の重要性
冒頭、Lazuli 代表の萩原より、NRFの「Startup Hub」ブースへの出展報告がありました。多くの来場者や世界各国から参加している小売企業との対話を通じ、「商品マスターの手入力」という課題がグローバル共通であることが確認されました。 AIによる商品情報整備を行うLazuliのミッションに対し、時代の進化とともに、世界的なニーズが高まっているという手応えが共有されました。
NRF 2026 リキャップ ― 「正解」よりも「納得」の時代へ
近年のNRFのテーマである「Make it Matter」や「Next is Now」を背景に、株式会社顧客時間 奥谷 孝司氏、Lazuli Chief Evangelistの伴 大二郎より、AI時代の小売企業のあり方について議論が展開されました。

Google vs Walmart:主導権を巡る攻防
Googleが生成AIを活用した「エージェントコマース」を推進する一方、Walmartは顧客との信頼関係(Trust)や配送・アフターケアの責任を自社で保持し、主導権を渡さない姿勢を明確にしている点が指摘されました。
AI×商品情報の戦略的価値
AI検索やエージェントコマースを機能させるためには、商品情報が整理されていることがビジネスチャンスに直結します。AIが顧客の曖昧な問いかけ(「週末のキャンプに最適な、家族で楽しめる一品」など)に対して的確に応えるためには、スペックデータだけでなく、用途、頻度、文化的背景といった「メタデータ」の整備が不可欠です。
顧客の「納得感」を醸成するデータの力
AIが「正解」を提示する時代だからこそ、リテールは効率性以上の価値を提供しなければなりません。顧客にとって重要なのは購買における「納得感」であり、文脈(コンテキスト)やカルチャーに基づいた情報が商品に付与されていなければ、AIは顧客を納得させる提案ができません。そのような提案を実現するためには、商品情報(プロダクトデータ)のリッチ化が不可欠であると語られました。
WGSNが予測する消費トレンド
トレンド予測企業WGSNのセッションからは、以下を含む、消費トレンドの重要キーワードが紹介されました。
・Sensory Adjust:デジタル化の反動で、五感や手触り感が重要になる。
・Chaos Regulation:情報過多(カオス)の中で、企業はノイズを排除し、意味のある情報を提供する。
・Fragmented Identity:デモグラフィック属性ではなく、流動的なアイデンティティに対応する。WGSNが予測する消費トレンド
今後の消費行動を読み解く上で重要なこれらのトレンドは、リテール戦略において、単なる機能性だけでなく、感覚的な体験の提供や、パーソナライズされたコミュニケーションの重要性が高まることを示しています。
AIとデータ活用の最新潮流 ― プラットフォーマーの進出と課題
データ分析とAIの視点から、NRFで見えた技術トレンドと課題についてLazuli 代表の萩原より解説がありました。
「Garbage in, Garbage out」の再認識
Googleなどのプラットフォーマーが「Universal Commerce Platform(UCP)」などでリテール業界へ本格参入する中、多くの企業が「AIに的確な回答をさせるためのデータが整っていない」という壁に直面しています。 チャットコマースなどのAI活用において、アルゴリズムだけでなく、その源泉となる商品マスター(Product Data)の整備が不可欠であるという認識が、米国でも急速に広まっています。
ニューヨークの最新トレンド ― StorylivingとCultural Curiosity
ニューヨーク現地で活動するブランディング・スペシャリストの岩原 マリ氏より、リテールと文化の視点から最新トレンドが紹介されました。

Co-retailing & Third Places
パブリックスペースが少ないニューヨークでは、リテール店舗がカフェやバーを併設し、コミュニティ機能を持つ「Third Place(第三の居場所)」としての役割を担い始めています(例:Million Goods, Colbo)。
Storytellingから「Storyliving」へ
単にブランドの物語を語るだけでなく、顧客を没入させ体験させる「Storyliving」へと手法が進化しています。米国消費者は懐疑的になっているため、実際に参加・体験して納得してもらうプロセスが重要視されています。
Cultural Curiosity & Wellness
「Cultural Curiosity(文化的好奇心)」の背景には、極度な政治的混迷と社会の分断(トランプ/非トランプの対立)があります。不安定な情勢に疲弊した消費者は、日常を逃れるために、「抹茶(Matcha)」や「バスハウス(サウナ/温泉)」など、時間をかけてリセットできる日本・アジア由来の文化が、ウェルネスのリチュアル(儀式)として再解釈され、熱狂的に受容しています。
テクノロジーと「人間らしさ」の融合
セッション後のディスカッションでは、参加企業各社より活発な意見が交わされました。 LVMHが職人(クラフトマンシップ)を前面に出している事例などが挙げられ、デジタルが瞬時にコピーを生み出せる時代において、 「人間の手による時間」と「クラフトマンシップ」こそが、AIに複製不可能な究極のラグジュアリー となっている、という視点が共有されました。また、日本企業が持つ「おもてなし」や「東洋思想」が、テック化が進むグローバル市場における強力な差別化要因になり得るという議論で締めくくられました。
まとめ
NRF 2026のメッセージ「Next is Now」は、未来は今の延長線上にしかないことを教えています。AIという「黒子」を使いこなしながら、日本企業がグローバルで勝機を見出すために必要なことが多く語られました。
1. 信頼(Trust)の証明としてのデータ整備: AIが偽情報を生み出し、プラットフォーマーが情報を独占しようとする時代、自社のPDP(商品データ)を正確に保ち、一貫性を証明し続けることは、ブランドが顧客と結ぶ「信頼の契約」そのものとなる。
2. 「Heritage as a Barrier」:AIに勝つための時間軸: 参加者同士の議論にあった通り、日本企業が持つ「ヘリテージ(積み重ねた時間)」は、AIが明日から真似できるものではなく、「J-Beauty」に宿る丁寧なケアや、時間をかけたものづくりは、世界が今最も求めている「納得」の根源となっている。
3. データと体験の統合: CDP(顧客のこだわり)とPDP(商品の意味)を高度に一致させることで、顧客が自分の意志で選んだという「納得感のある買い物体験」を実装する必要が増している。AIが進化すればするほど、人間らしさや文化的な文脈の価値は高まるため、私たちが本来持っている「丁寧さ」や「ほっこり」といった価値を、最新のテクノロジーと融合させ、世界に誇れる「納得の体験」を今、ここから作り上げていく必要がある。
Lazuliは、社内外に散在する商品情報をAIを用いて、自動で構造化、整備、拡張するソリューション「Lazuli PDP」を提供しています。商品への意味付け(タグ付け)やAI-Readyな商品データ整備にご関心、ご課題がある方はいつでもご連絡ください。
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